岡山さんのトマト焼酎・とまと石けん
規格外トマトの有効活用で特産品化を目指す
そうして、ひとつの取り組みを試みた。
熊本県八代市は、年間平均気温16℃。冬場でも氷点下になることは少なく、ハウスの加温用燃料費が少なくて済むという好条件に恵まれ、冬春トマトの一大産地として成長を遂げてきた。
八代地域のトマト栽培は、全国で初めて産地が一体となって、オオタバコガ、ハスモンヨトウといった夜蛾類の侵入防止や忌避効果が高い「黄色灯」を導入したほか、防虫ネットや粘着テープ(ラノテープ)による害虫防除、有機質肥料の使用など、減化学肥料、減農薬栽培やマルハナバチによる受粉が取り組まれている。
近年は生産量の増加に加え、外観が美しいものを望む消費者の嗜好を配慮した厳しい選果が行われており、
そのため、味は良くても規格外品で出荷できないトマトが増加しており、地域経済の視点からも有効活用が課題となっていた。
そのような中、栽培技術の向上や消費者に好まれるトマトづくりの研究を行いながらも、熟れ過ぎや規格外で商品化できないトマトの有効活用を検討し、加工品で地域の特産品となるようなものが作れないかと焼酎製造業者に相談し、加工品づくりをスタートさせた。
平成19年、八代市特産の冬春トマト「はちべえ」のブランド商標権を持つ「八代地方トマト・メロン販売連絡協議会」の許可を得て、同市の「元気が出る産業活性化支援補助金」を活用し「はちべえ」ブランドの「トマト焼酎」を製造した。
焼酎の製造は熊本県多良木町の蔵元に委託。八代産のうるち米をベースに、規格外トマト約550kg を裏ごししたものを2次仕込みの段階で加えることで、トマトの甘い香りを残した焼酎が仕上がり、
「八代とまと焼酎はちべえ」
の商品名で販売している。
また、20年3月には大分県の商品開発会社から「トマトを使った石けん」づくりの提案を受け、4月に完熟トマトを煮詰めた果汁5ℓを同社へ送付。
濃縮した温泉水やハーブ、はちみつ等の天然素材だけを使用し、1ヶ月かけて作り上げた試作品200個(1個40g)が完成した。
石けんは、トマトが主原料の普通肌用と、パプリカを加えた乾燥肌用の2種類が作られている。
出来上がった直後は真っ赤な色の石けんも1ヶ月の乾燥期間を経るとオレンジ色に変わる。
その鮮やかな色と、トマトに含まれる色素成分の「リコピン」に抗酸化作用があることから、試作品はすぐに品切れとなり、改めて50gと100gの商品が製造されるほどの人気で、地域活性化の起爆剤として規格外トマトの加工品に大きな期待が寄せられている。
また、口コミで商品を知って訪れる人やリピーターの数も増加しており、商品に関する問い合わせも多く寄せられるなど好評を得ている。
これからも地域貢献策の一つとして、障害者施設などに販売や果汁製造の一部を委託することも考えており、今後は、八代地域全体の取組に発展させ特産品化を図りたい。
また、八代地域には豊富な農産物や海産物が多いので、それらを使用した様々な商品の開発を進めるとともに、
農家レストランを建設して八代の味を提供する構想も立てている。